ほくほくフィナンシャルグループ傘下の北海道銀行では既存店舗のファシリティマネジメントと並行して、新たな顧客接点を構築した。さらに地域の将来を見据えて、GX※1を推進。この地域経済の活性化と脱炭素社会の両立を目指す店舗戦略について、北海道銀行 営業統括部の大建 裕貴氏、経営企画部の多賀 公昭氏に話を聞いた。
顧客接点を守る店舗戦略
「人口減少や物価上昇に伴い、人材の確保や店舗維持は大きな経営課題となっています」と大建氏は話す。
北海道銀行は、実店舗だけに依存しない接点戦略を、地域企業と連携しながら進めている。その一つが、北海道を中心に展開するコンビニエンスストアであるセイコーマート店舗内での『道民のATM』展開だ。道内に広い店舗網をもつセイコーマートと提携することで、支店がないエリアでも金融サービスを提供できる体制を整備。2026年7月現在、約600店舗にATMを設置済みだ。加えて、地元の信用金庫・信用組合とのATM相互無料提携を結び、地域全体の利便性向上やATM設置コスト分散につなげている。
二つ目は、大型商業施設内にインストアブランチとして移転した旭川市の大町支店だ。独立型店舗よりも省スペースで、維持管理の負担を軽減しつつ、伸びた営業時間内で相談対応件数を増やす。土日にはセミナーを開催するなど、商業施設の利用者に来店を促している。大建氏は今後について次のように話す。
「キャッシュレス化の流れがあっても、顧客接点である店舗の重要性は変わりません。今後は実店舗での営業とともにATMやアプリなどの非対面チャネルの充実化を図っていくことで、お客さまの利便性向上に取り組んでいきます」。
自ら先陣を切るGX戦略
店舗戦略と並行して、ほくほくフィナンシャルグループ(含む北海道銀行・北陸銀行)では経営戦略の柱にSX※2、GXを据え、2030年までにグループ全社のScope1、2(自社排出)について、カーボンニュートラル(実質ゼロ)の実現を掲げている。しかし「金融機関に期待されているのはScope3、つまり投融資先のGHG(温室効果ガス)排出量の削減です」と多賀氏は話す。さらに「金融機関は資金供給だけでなく、地域全体の変革を支える役割を担っています。GX推進もそのひとつで、我々はお客さまと共にGHG排出量削減を目指しています」と多賀氏は語った。北海道銀行はGX化への先陣を切るため、2025年に留萌支店を新築移転。NTTファシリティーズの協力のもと、道内金融機関で初めてZEB認証※3を取得した。この次世代型店舗には創エネルギー設備も導入しており、地元企業から発電状況や運用に関する問い合わせが寄せられるなど、店舗そのものが地域のGXへの関心を高める役割を果たしている。
ZEB化のカギは、価値の可視化
しかし実現において、地域企業へのGX促進、特に施設のZEB化は初期投資が高くつく点が大きな壁となる。大建氏は「多くの企業は、依然として脱炭素への投資をコストとして捉えています」と語る。再生可能エネルギー導入の必要性は理解しながらも、目の前の経営課題が優先されてしまうのだ。
そこで、ほくほくFGでは自治体と連携してGX関連の新制度の制定。補助制度の活用による設備投資を促す。さらに「GHG排出量の可視化を前提に融資条件を優遇するなど、削減への第一歩を後押しするファイナンス商品なども提案しています」と多賀氏は話す。
加えて、ZEBの検討材料として二人が関心を寄せるのが、NTTファシリティーズとデロイト トーマツ コンサルティングが開発した新指標のNEBs(Non-Energy Benefits/ネブズ)※4だ。これはエネルギー・光熱費削減以外の副次的効果(企業価値向上、従業員満足、人材採用、ブランド浸透、地域との関係強化など)まで含めて評価する指標で、GX投資の判断に役立つ可能性がある。大建氏は「ZEB化による人材確保や維持・運用費の低減など、経営に関わる副次的な価値まで見える化できれば、意思決定を後押しする材料になる」と期待を高める。
地域に根差した金融機関だからこそ、地域の未来を先回り、率先してGX戦略を実践する。ほくほくFGの姿勢を示した後、多賀氏は「脱炭素社会の実現に向け、再生可能エネルギーの導入拡大が求められる中、今後も新規店舗でZEB化を進め、その成果や知見を地域へ循環させていきたいと考えています」と語った。
*1 GX(グリーン・トランスフォーメーション):温室効果ガスの排出削減と経済成長の両立を目指し、社会や経営の構造そのものを変革させる取り組み。
*2 SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション):社会と企業、双方の持続可能性を両立させ、企業価値を高めるための経営変革。
*3 ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)認証:建物で消費する年間の一次エネルギー消費量を実質ゼロにすることを目指した評価・認証制度。
*4 NEBs(Non-Energy Benefits/ネブズ):建物がもたらす、光熱費削減以外の効果・付加価値を5つのグループ・12の指標に体系化し、金銭価値として可視化することで総合評価する指標。
・NEBs算定ができるポータルサイトはこちらから
https://www.ntt-f.co.jp/nebs/nebs-portal/
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